アジアでは初となるラグビーワールドカップ2019日本大会が2019年9月20日に開幕しました。各国の代表選手たちも馴染みのない日本独特の気候や湿度に苦戦しながらも前大会の日本対南アフリカ戦でみた世紀の番狂わせに続くような熱い試合が繰り広げられています。
予選から決勝まで感動と記録を残していきたいと思います。
予選
準々決勝
イングランド 40 – 16 オーストラリア
会場
大分スポーツ公園総合競技場
2019年10月19日(土) 16:15
観客数 36,954人
試合結果
トム・カリー
試合内容
全国各地で24日間に渡り行われてきたプ-ル戦も終わり、いよいよ8強によるノックアウト方式の決勝トーナメントが幕をあけた。
最初の試合となるイングランド対オ-ストラリアは、準々決勝最大のビッグマッチというだけあって、大分スポーツ公園総合競技場には熱狂的な両チ-ムのサポ-タ-と日本の観客が大勢詰めかけ試合開始3時間前から、スタジアムの周りは和やかな観客同士での記念撮影や大合唱で盛り上がっていた。
この試合の注目は、キックを多用し規律(セットピ-ス)を起点とするイングランドと、あまりキックを多用せずボールを保持し混沌(アンストラクチャ)から得点に繋げるオ-ストラリアという対照的なプレ-スタイルを持つ両チ-ムの戦術(両監督の采配も含む)が楽しみです。
また、けが人も含めたフィジカル面において、中13日の休息と3試合消化で1試合少ないイングランドが中7日で4試合消化のオ-ストラリアに対して優位性があるのかどうかも注目点です。
一時の高温多湿のコンデションから気温も下がり最高のコンデションの中、ウォ-ムアップがら凄い熱気の両チ-ムがスタジアムに入場すると、スタンドの観客は興奮し、国歌斉唱では両チ-ムのサポ-タ-による大合唱がスタジアムを興奮の坩堝(るつぼ)へと誘った。
まるで海外のスタジアムに居るかのような雰囲気のなか、イングランドサポ-タ-による応援歌(Swing Low,Sweet Chariot)が響き渡ると共に前半がキックオフされた。
開始からオ-ストラリアが積極的に攻撃を仕掛け、ボールを保持しながら展開し18ものフェ-ズを重ね敵陣深くまで攻め込むが、ノックオンでチャンスを活かせなかったのは痛かった。
しかし、この試合に対するオ-ストラリアの意思を感じた攻撃だつた。
イングランドも我慢して敵陣へ押し返し、イーブンな状態まで戻す。
12分、イングランドの攻撃をタ-ンオ-バ-すると、FBカ-トリ-・ビ-ルが自陣から敵陣22m付近まで一気にゲインし、サイドに展開するとイングランドのハイタックルによりペナルティを獲得。
このペナルティゴ-ルをSOクリスチャン・リアリ-ファノが決めてオ-ストラリアが3点を先制する。
15分、イングランドもオ-ストラリアのミスからゴール前のビッグチャンスを得るが、Flankerデ-ビッド・ポ-コックの素晴しいジャッカルでチャンスを活かせない。
しかし、チャンスは継続し17分、ラインアウトから右サイドへパスを繋ぎ更に左サイドへ展開すると、最後はWingジョニー・メイが飛び込んで逆転トライ。
キックも決まって7-3とする。
更にイングランドは22分、自陣22m付近でオ-ストラリアの攻撃をCentreヘンリ-・スレ-ドがタ-ンオ-バ-(Flankerデ-ビッド・ポ-コックの珍しいパスミス)すると一気に抜け出して、グラバ-キックのパスを受けたWingジョニー・メイが2つ目のトライを挙げる。
自身の50キャップの節目に華を添えた。
ゴ-ルも決まり14-3とリードを広げる。
オ-ストラリアにとっては、キックオフからのボ-ルを上手く展開して敵陣に入り込んでいただけに痛い失点となった。
26分、オ-ストラリアはラインアウトから相手ゴ-ル前に攻め込むもののトライを奪えない。
それでもアドバンテ-ジからペナルティゴ-ルを決めて3点を返す。
29分、イングランドもすぐさま相手の反則によりペナルティゴ-ルを決めて突き放すが、40分にスクラムでイングランドの反則を誘うと、オ-ストラリアはきっちりペナルティゴ-ルを決めて前半終了。
17-9とイングランドがリードして折り返した。
イングランドとしてはミスが多少あるものの、持ち味を出せた展開だった。
オ-ストラリアも持ち味を出した攻撃が出来てにいたので、後は自陣から敵陣への入り方(パスにこだわりすぎて陣地を回復できない上、中途半端なキックからピンチを招く)の修正が必要ではないでしょうか。
後半開始早々の43分、タ-ンオ-バ-からオ-ストラリアはセンタ-ライン付近で左サイドにパスを展開すると、19歳のCentreジョ-ダン・ペタイアの見事なパスを受けたWingマリカ・コロインベテが一気に抜け出し、1人かわしてそのままインゴ-ル中央にトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって16-17の1点差に迫った。
この時のFlankerマイケル・フ-パ-が後方を離れず付いていく動きは最高だった。
しかし、直後の46分にイングランドはオ-ストラリアの不用意なタッチキック(陣地を取るわけでもなく、コンテストキックでもなく、意図が感じられない)で得たラインアウトからチャンスを掴むとフェ-ズ7を重ね、Fly Halfオーウェン・ファレルの矢のような鋭いパスを受けたPropカイル・シンクラーが素晴しいランニングラインから約20mを走ってトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって24-16と再び8点差に広げる。
オ-ストラリアにとってはトライを取った後の重要な局面だっただけに、勢いを絶たれる非常に痛い失点となった。
51分にもスクラムで圧倒し反則を誘うと、イングランドはペナルティゴ-ルを決めて3点を追加する。
オ-ストラリアも54分から、敵陣深くで攻め続け相手反則によるペナルティを得てスクラムでトライを取りに行くが、痛恨のタ-ンオ-バ-で得点できない。
約6分間攻め続け、ペナルティゴ-ルのチャンスも捨ててトライを奪いに行っての無得点だけに、メンタルのダメ-ジが大きく試合を左右する局面となった。
徐々に優位に立ったイングランドは、スクラム、モ-ルでペナルティを取るなど自分たちの強みであるセットピ-スでオ-ストラリアを圧倒し65分、72分にペナルティゴ-ルを決めて33-16と大きくリ-ドを広げる。
更にイングランドは敵陣深く入る込むと自陣でパスを回すオ-ストラリアのロングボ-ルをWingアンソニー・ワトソンがインタ-セプトし、そのまま走り込んでダメ押しのトライを挙げる。
オ-ストラリアもWingマリカ・コロインベテが独走するトライシ-ンがあったがスロ-フォア-ドの判定で無得点。
終わってみれば40-16でイングランドが快勝しベスト4進出を決めた。
イングランドは自分たちの強みを活かしたゲ-ムプランをしっかり実行できた内容だった。
準決勝に向けて問題はないように感じた。
オ-ストラリアも自分たちの持ち味は出せたと思うが、プ-ル最終戦でも見られたように自陣からの脱出方法に難があったように感じた。(もっとシンプルにキックでエリアを回復しても良かったのではないか。自陣深くでのボールキ-プから相手ボ-ルになり2トライを献上する)
試合後、今大会で代表引退を表明し最後まで1人センタライン中央に立ち尽くしスタジアムを見つめるウィル・ゲニアの姿が印象的でした。
スタッツ
ニュージーランド 46 – 14 アイルランド
会場
東京スタジアム
2019年10月19日(土) 19:15
観客数 48,656人
試合結果
ボ-デン・バレット
試合内容
大分スポーツ公園総合競技場で勝利したイングランドとの対戦を賭け、史上初の3連覇を目指すニュージーランドと、初のベスト4進出が懸かるアイルランドが東京スタジアムでの準々決勝で激突した。
ニュージーランドはプ-ル戦も順調に突破し、中12日というスケジュールは準備期間としてフィジカル面でも情報分析においても十分なアドバンテ-ジになるのではないだろうか。
一方のアイルランドは、プ-ル戦で日本に対してまさかの敗北を喫し、予定外の2位通過でいきなりニュージーランドとの対戦を余儀なくされたが、2016年からの直近の3試合で2勝1敗と勝ち越している。
また、今大会で代表引退を表明しているキャップ数124を誇るキャプテンのHookerロ-リ-・ベストの為にもモチベ-ションは最高ではないでしょうか。
緑と黒に染まったスタンドの大観衆の熱気は、ナショナルアンセムとラグビ-アンセムで最高潮を迎えた。
試合前のニュージーランドの儀式ウォ-クライ「ハカ(カパオ・パンゴ)」は、アイルランドサポ-タ-による応援歌「Fields of Athenry(フィールズオブアセンライ)」の大合唱によって完全にかき消された。
スタジアムとピッチが一体となった熱気と興奮の中キックオフされた試合は、互いに落ち着いたイーブンの入りからスタ-トすると5分、ニュージーランドが最初に仕掛ける。
ハイパントを利用してボ-ルを再獲得しパスを繋ぎ展開すると、アイルランドがインテンショナルノックオンの反則。
Fly Halfリッチ-・モウンガがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3点を先制する。
アイルランドも直後のキックオフからのボールの再獲得に成功し、ボ-ルを保持しながら相手陣に入り込むが、一瞬のミスを付かれて大きく自陣深くに戻されてチャンスをものに出来ない。
その後、変幻自在な攻撃で主導権を握ったニュージーランドは14分、敵陣深くでFWを当ててフェ-ズを重ねると、最後はSHア-ロン・スミスが一瞬空いたスペースに飛び込みトライ、コンバ-ジョンキックも決まって10-0とリードを広げる。
ペナルティを貰ってもタッチキックをミス(確実にタッチに蹴り出せずインプレ-になる)するなど自らチャンスを失うアイルランドに対して、ニュージーランドは20分にも右サイドの敵陣10m付近のスクラムから速いテンポでパスを繋ぎ、アイルランドの出足の速いディフェンスをかわしWingセヴ・リ-スの見事な動きから左サイドに展開すると、Wingジョ-ジ・ブリッジが一気に抜け出し、最後はSHア-ロン・スミスがショ-トサイドに飛び込んでこの試合自身2つ目のトライを挙げる。
コンバ-ジョンキックも決まって17-0と大きくリ-ドを広げる。
完全に主導権を握ったニュージーランドの変幻自在の攻撃の前に、防戦一方に陥ったアイルランドも31分に敵陣22m付近に攻め込むものの、またしても自らのミスからボールを奪われるとカウンタ-からFBボ-デン・バレットが得意のドリブルで一気にインゴ-ルまで走りトライ。
前半終了間際にアイルランドも初めて敵陣5mまで攻め込むビッグチャンスを得るが、反則により得点ならず。
相手のミスをすべて得点に繋げたニュージーランドが22-0でアイルランドを無得点に抑えて前半終了。
ニュージーランドはチ-ムと個人のスキルの高さでアイルランドを圧倒し、このままの展開で後半も進めたいでしょう。
アイルランドは全く良いところなく終わった前半だった。
後半は持ち味である相手陣でボ-ルをポゼッションしながら試合を展開していきたい。
後半に入ってもニュージーランドの圧倒的な優位は変わらず主導権を保持すると47分、個人スキルの高さからミスのない素晴しい攻撃を披露すると、ゴール前Number Eightキアラン・リ-ドのオフロ-ドパスを受けたHookerコ-ディ-・テイラ-が中央に飛び込みトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって29-0と更に点差を広げる。
完璧に試合を進めるニュージーランドは60分にも、左サイドのモ-ルを起点にSOリッチ-・モウンガの右サイドへの素晴らしいキックパスをWingセヴ・リ-スが受けディフェンスを突破し、最後はSecond Rowマッド・トッドが飛び込みチ-ム4つ目のトライを挙げ、34-0とアイルランドを突き放した。
全く良いところのなかったアイルランドだったが65分に、この試合2回目の敵陣深くでの攻撃チャンスを得ると一旦は物に出来ないものの、69分、アドバンテ-ジにより再びチャンスを得てセンタ-スクラムからCentreロビー・ヘンショウが中央に飛び込んで初トライを挙げ、コンバ-ジョンキックも決まって34-7と一矢報いた。
しかし、主導権は渡さないニュージーランドは攻撃の手を緩めず、72分には敵陣で相手ボ-ルを奪うとFlankerア-ディ-・サヴェアからHookerデイン・コ-ルズ、Wingジョ-ジ・ブリッジへと次々にオフロ-ドパスで繋ぎ中央にトライ。
華麗で見事な攻撃でした。アイルランドも意地を見せ76分、カウンタ-から敵陣深く攻め込み、ラインアウトからFWでじわじわ前進すると、最後はニュージーランドの反則によりペナルティトライで7点を返し41-14とする。
故意の反則によりニュージーランドSecond Rowマッド・トッドがイエローカード「シンビン」で10分間の一時退場。
14人になっても最後まで攻撃し続けるニュージーランドは78分、左サイド敵陣5mスクラムから左サイドに展開すると大外に余ったWingジョ-ディ-・バレットが華麗にフィニッシュ。
最高の形で試合を締めくくった。
結果は46-14でニュージーランドが圧勝し、優勝候補本命の実力を見せつけた。
攻守の切り替えの速さ、状況判断能力の高さ、チ-ムとしての完成度の高さ、リアクションからの攻撃の鋭さ、個人スキルの高さなど、ほぼパーフェクトな試合を見せたニュージーランドの素晴らしさだけが際立った試合だった。
不安要素としては素晴しい戦いをした時ほど容赦のないニュージーランドが相手に2トライを許したことが気がかりであり、ちょっとした気の緩みではないことを願いたい。
一方、アイルランドはすべてにおいて良いところがなかった。
自分たちの持ち味も全く出させてもらえず、またしてもベスト8の壁を打ち破ることは叶わなかった。
HCジョ-・シュミットの勇退と共に代表引退を表明しているHookerロ-リ-・ベストが交代でピッチを後にすると、スタンドの観客がスタンディングオベーションで彼を労う光景と試合終了後、両チ-ムの選手によって見送られる光景は、彼の偉大さを物語るものだろう。
ベスト4を懸けた戦いはニュージーランドが制しイングランドとの対戦に駒を進めた。
スタッツ
ウェールズ 20 – 19 フランス
会場
大分スポーツ公園総合競技場
2019年10月20日(日) 16:15
観客数 34,426人
試合結果
アーロン・ワインライト
試合内容
大分スポーツ公園総合競技場での最終戦は、ウェールズ対フランスの欧州勢同士の準々決勝という素晴しい好カ-ドによって締めくくられた。
ワ-ルドカップでの両国の対戦は、2011年ニュージーランド大会の準決勝のみで、フランスが9-8で勝利してる。
この試合の注目は、フランス独特の発想を持ったラグビ-が若い力の勢いと、予測不可能な戦いで、手堅く鉄壁なディフェンスと効果的にキックを多用するウェールズを攻略できるかだろう。
また、中13日のフランスは、若いだけに長い休息が勢いを削ぐマイナスな要素を持ち合わせている可能性もある。
一方、中6日のウェールズはフィジカル面の回復が懸念される。
シックスネーションズで全勝優勝し、最近フランスに8戦7勝のウェールズか、若い力で勢いに乗るフランスが7回目のベスト4入りを果たすのか、注目の一戦はヨーロッパの雰囲気が漂うスタジアムでの国歌斉唱で最高潮に達し大観衆の歓声の中、キックオフされた。
試合開始早々、フランスがディフェンスで圧力をかけペースを握ると、攻撃でも若いSHアントワ-ヌ・デュポンとSOロマン・ヌタマックを中心に流れるようなフランスらしい攻撃でウェールズ陣深く入り込むと4分、敵陣5mラインアウトを起点に、Hookerギエム・ギラドがインゴ-ルに飛び込むものの、ウェールズに防がれるが更に攻撃を続行するフランスは、Second Rowセバスチアン・バアアマイナがバックスの援護を受けてインゴ-ルに飛び込みトライ。
フランスが貴重な5点を先制する。
Second Rowセバスチアン・バアアマイナにとって代表初トライとなった。
更にフランスは7分にもコンテストキックのこぼれ球を再獲得すると、自陣15m付近のラックから出たボ-ルをSOロマン・ヌタマックからCentreヴィリミ・ヴァカタワへ繋ぎ、1人かわしたCentreヴィリミ・ヴァカタワが駆け上がるSOマン・ヌタマックに戻すと、サポ-トしていたSHアントワ-ヌ・デュポンに見事に繋がり、更にサポ-トしていたFlankerシャルル・オリボンに渡すとそのままインゴ-ルに走り込んでトライ。
鮮やかな連携プレ-から見事なトライだった。
コンバ-ジョンキックも決まって12-0とリードを広げる。
フランスらしい得意のプレ-スタイルが序盤から炸裂した。
まさにラグビ-ファンを魅了するフランスのシャンパンラグビ-だ。(オートマティク化されていない個々の自由な発想から展開される攻撃)
フランスの鋭いディフェンスの前に糸口の見えないウェールズだったが11分、センタライン付近でディフェンスでプレッシャーを与えるとHookerギエム・ギラドのハンブルしたボ-ルを奪ったFlankerアーロン・ワインライトが一気に抜け出し独走トライ。
コンバ-ジョンキックも決まって7-12と点差を縮める。
Flankerアーロン・ワインライトにとっても代表初トライとなる。
開始僅か11分で両チ-ム合わせて3本目となる、トライの応酬で打ち合いの様相を呈してきた。
セットピ-スで優位に立ったウェールズが圧力をかけると19分、フランスは自陣22m付近でハイタックルの反則。
SOダン・ビガーがペナルティゴールを決めて10-12と2点差に詰めよる。
その後、テリトリ-を取り合う展開が続く中、両チ-ムチャンスを掴むものの単純なミスが目立ち得点できない。
膠着状態に変化が訪れたのは28分。
フランスの一連の攻撃の流れの中で途中出場のウェールズNumber Eightロス・モリアティが危険なハイタックルでイエローカード「シンビン」で10分間の一時退場。
フランスはペナルティから敵陣22mに入ると30分、ラインアウトから数的優位を活かして細かく前進しフェ-ズを重ねると、ウェールズの陣形が広がった隙を突きWingダミアン・プノ-の絶妙なパスを受けたCentreヴィリミ・ヴァカタワが左サイド中央にトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって見事なプレ-を見せたフランスが19-12と7点差に広げる。
更に畳みかけるフランスは、パスあり、ランあり、オフロ-ドあり、足でのトラップありとフランスらしい自由な発想と個人スキルでゴール前まで攻め込み観客を魅了するが、ウェールズの必死のディフェンスの前に得点は奪えず、アドバンテ-ジの反則からのペナルティゴ-ルも活かせず前半終了。
フランスは持ち味の発想と個人スキルを存分に発揮し、ほぼ理想的な試合展開だった。
ウェールズも決して悪くない展開だったので十分に逆転可能だと思う。
後半開始からウェールズが仕掛けるが徐々にペースを掴んだフランスは43分に、途中出場のSOカミ-ユ・ロペズが外れはしたもののドロップゴ-ルを狙うなど優位に試合を進める。
しかし、48分、状況が一変する。
フランスボ-ルのラインアウトからモ-ルで押し込む際、Second Rowセバスチアン・バアアマイナが絡んでくるウェールズのFlankerアーロン・ワインライトに対して首に腕を巻き付け、更に顔面に肘打ちを見舞うという悪質な反則により、文句なしのレッドカ-ドでの一発退場処分を受ける。
フランスにとって悪夢であった。
ペナルティをきっかけに敵陣に入り込むと、数的優位を活かして攻撃を仕掛けるウェールズは、アドバンテ-ジによる反則からSOダン・ビガーがペナルティゴールを決めて13-19に点差を縮める。
その後、数的優位を活かしたいウェールズだが、フランスの巧みなキックとチャンスでの自らの雑なプレ-によって中々得点できない。
フランスもカウンタ-からチャンスを活かせないまま時間が過ぎ、73分、ウェールズはフランス陣内中央5mのフランスボ-ルのスクラムに強烈なプレッシャーをかけボ-ルを奪うと、最後はNumber Eightロス・モリアティが飛び込んで逆転のトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって、遂にウェールズが20-19と試合をひっくり返した。
フランス最後の攻撃も、スクラムでの反則で万事休す。
前後半で全く別の顔を見せたフランスと終始冷静に試合を進めたウェールズの一戦は、劇的な展開を制したウェールズが20-19で勝利し、準決勝に駒を進めた。
フランスは1点及ばず敗北し準々決勝で姿を消した。
フランスにとっては結果的に、前半37分のSOロマン・ヌタマックがアドバンテ-ジからのペナルティショットをポ-ルに当てて得点出来なかった事と、非常に重大な48分の退場が響いた。
しかしながら、モールとスクラムしか攻撃がなかった一時期から若手を中心に、フランスらしい攻撃にモデルチェンジしつつあるため、2023年フランス大会を含めた今後に、大いに可能性を感じた今大会のフランスだったと思う。
勝利したウェールズは、経験豊富な選手たちがしっかりとチ-ムを導き、試合を遂行したと思う。
シックスネーションズで全勝優勝した経験は、この様な状況でしっかり発揮されることを改めて感じた。
スタッツ
日本 3 – 26 南アフリカ
会場
東京スタジアム
2019年10月20日(日) 19:15
観客数 48,831人
試合結果
フランソワ・デクラ-ク
試合内容
ベスト4への最後の席を懸け、準々決勝最後の試合、日本対南アフリカの試合が満員に膨れ上がった東京スタジアムで行われた。
2015年イングランド大会から6連勝中と波に乗り、史上初のベスト8進出を決めた日本と、前回大会でラグビ-史で最大の番狂わせを受けた南アフリカの一戦の注目としては、中6日のスケジュールでベンチメンバ-も含めてほぼ固定された選手たちによって全試合全力で戦ってきた日本が、中11日でターンオーバー制を敷きながら余力を残し、プ-ル戦よりもギアを1段階も2段階も上げてくる南アフリカのフィジカルに対して対応できるのかと、フランソワ・デクラ-クのディフェンスポジションにより日本のサイド攻撃が無力化された場合の対処方法が注目点として挙げられる。
日本に最大の屈辱を受けた南アフリカは、他の6チ-ムより日本に対して油断することなく研究し、周到な準備をしてくることから日本にとっては最も避けたかった相手であり、厳しい戦いになる事が予想された。
決勝トーナメントでの大観衆の国歌斉唱はプ-ル戦とは違った熱気が感じられた。
日本に対して油断することなく周到な準備をし備えていた南アフリカは、キックオフのボールをキャッチした日本のキ-プレイヤ-Number Eight姫野 和樹に対して猛烈なタックルで押し返す。
この後、Number Eight姫野 和樹はこのレベルでの実力不足を露呈し、全く何もすることが出来ず試合から消えることになった。
日本の攻撃のキ-ポイントの一つであったNumber Eight姫野 和樹の突破力を完璧に封じ込めた南アフリカは3分、敵陣左サイドのスクラムを得ると圧倒的に押し込み、SHフランソワ・デクラ-クからショ-トサイドのWingマカゾレ・マピンピにパスを送ると、SO田村 優との1対1の局面をあっさり制し、インゴ-ルに飛び込んで先制トライを挙げ5-0とリ-ドする。
日本のキ-ポイントであるスクラムでも圧倒し、以前にも書いたがSO田村 優のディフェンスのポジショニングとディフェンス能力の低さを突いた戦術をしっかり遂行できるスキルとメンタリティーで完璧にトライに繋げた南アフリカが主導権を掴んだ。
8分には右サイド自陣10m付近からセンタラインまでモ-ルで押し込み一気に左サイドへ展開し、Wingマカゾレ・マピンピが大きくゲインし敵陣22mの中に入るもののチャンスを活かせない。
優位に試合を進める南アフリカだったが9分、状況が一変する。
Propテンダイ・ムタワリラがProp稲垣 啓太に対して、危険なタックル(タックルの当たりは見事でしたが持ち上げて肩から落とした、行き過ぎでした)によりイエローカード「シンビン」で10分間の一時退場を受ける。
ラインアウトでスチ-ルされるが運よくル-ズボールになったり、8人対7人という優位な状況で組んだスクラムでも圧倒されたりと、数的優位に立った状況を活かせない日本は14分、持ち味の素早いテンポから左サイドに展開しWing福岡 堅樹が素早く突破して一気に推進すると南アフリカの見事なディフェンスの前に一旦止められるが、ボールを保持し右サイドに展開。
更に素早くリリースしてゴールラインまで数メートルに迫るものの、南アフリカのディフェンスも素晴らしく最後はProp具 智元の反則(横から入る)によりビッグチャンスを逃す。
両チ-ムとも見事な攻防だった。
日本にとってはこの試合での最初で最後のトライチャンスとなった。
19分、日本は8人対7人という優位な状況でのスクラムでプレッシャーをかけ反則を得ると、SO田村 優がペナルティゴ-ルを決めて3-5と2点差に迫った。
これが日本のこの試合での唯一の得点となった。
20分に15人のイーブンに戻ると試合は膠着状態に入るが、28分過ぎから徐々にペ-スを掴んだ南アフリカは33分、素晴しいディフェンスからボ-ルを奪うと左に展開し長いパスで日本ディフェンスを完全に外し、トライかと思われたが痛恨のパスミスでチャンスを潰すと、名手FBウィリ-・ルル-の信じがたいノックオン、40分+1分にもダブルモ-ションによるトライ取り消しの反則など再三訪れる決定機をことごとくミスで潰し、前半は3-5の南アフリカリ-ドで終了。
点差は拮抗しているものの南アフリカの圧倒的優位は変わらない展開だった。
前半のフィジカル(何人も傷んでいる、攻守のサポ-トも遅い、すぐ起き上がれない)を見る限り、後半に強いと言われる日本のフィットネスは南アフリカには全く通用しないと感じ、圧倒的不利な状況に陥ることに変わりはないと感じた。
また、日本が失ったボールがまた日本に入るという運に恵まれた上、南アフリカのミスに完全に助けられた前半だった。
後半開始早々41分、南アフリカのパワ-の前に反則(松島が抱えられたまま動けずモ-ル停止)を取られると、南アフリカはスクラムでプレッシャーを与えペナルティのアドバンテ-ジを得て右サイドに展開し、SHフランソワ・デクラ-クの裏へのキックをキャッチにいったWingマカゾレ・マピンピに、空中でWing松島幸太朗が首に手を懸ける危険な行為で倒したが故意ではないと判断した主審は先程のアドバンテ-ジを適用した。
日本は命拾いしたでしょう。
43分、SOハンドレ・ポラ-ドがアドバンテ-ジからのペナルティゴ-ルをしっかり決めて3-8とすると、48分にも相手ボールスクラムに強烈なプレッシャーをかけ(日本の前列が完全に浮いてしまう)反則を誘いペナルティゴ-ルをしっかり決めて3-11とする。
ここまで南アフリカのパワ-プレ-が日本のFront Rowを圧倒する展開となった。
この後も日本は南アフリカの強烈なコンタクトに圧倒され、ボールをポゼッションしても相手の出足の速いディフェンスにズルズルラインを下げられ、セットピ-スでも完全に圧倒された。
57分にも疲れから規律を守れなくなった日本に対して南アフリカはまたしてもスクラムで圧倒し反則を得るが、SOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルを外し得点できず。
しかし、63分に日本の反則(ハイタックル)で得たペナルティゴ-ルをSOハンドレ・ポラ-ドが今度はしっかり決めて3-14と突き放す。
65分、南アフリカ陣内5mのラインアウトからモ-ルを組むと冷静に前進し約50m突き進むと、Hookerマルコム・マ-クスが抜け出し絶妙なタイミングでのパスをSHフランソワ・デクラ-クへ繋ぎ、そのまま飛び込みトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって3-21と大きく突き放した。
南アフリカの鮮やかな連携からの見事なトライだった。
南アフリカの本当の強さをまざまざと見せつけられたシ-ンだった。
69分にも自陣5mの日本のラインアウトをシングルリフトでスチ-ルするなど、ラインアウトでも優位に立っている南アフリカはディフェンスから圧力をかけボールを奪うと一気に回してSOハンドレ・ポラ-ドが自陣10mライン付近から抜け出すと、外側のFBウィリ-・ルル-に繋ぎ更にパスを受けた大外のWingマカゾレ・マピンピがWing松島幸太朗のハイタックルをものともせず吹き飛ばし(スピ-ドとパワ-で勝る)、そのままインゴ-ルに飛び込みダメ押しのトライ。
3-26となり勝敗は決した。
その後も攻める南アフリカと、守る日本の構図は変わることなく結果は3-26で南アフリカの圧勝に終わった。
日本は頑張ったが、前半全力を出し切った結果、後半は全く通用しなかった。
2015年以前の日本を見ている様だった。(コンタクト、セットピ-スで圧倒される)
もし余力を残した前半だとしたらもっと大敗していたと思う。
南アフリカは持ち味を十分に発揮し、周到な準備を完璧に遂行した。
特にコンタクト、セットピ-ス(ラインアウトスチ-ル4、スクラムペナルティ3)ものの見事に日本を打ち砕いた素晴しい勝利だった。
準決勝に向けてはミスが多かった点の改善が必要でしょう。これで準決勝進出チ-ムが出そろい2試合とも北半球と南半球が激突するカ-ドとなった。
準決勝
イングランド 19 – 7 ニュージーランド
会場
横浜国際総合競技場
2019年10月26日(土) 17:00
観客数 68,843人
試合結果
マロ・イトジェ
試合内容
4チ-ムに絞られた準決勝の第一試合は大会3連覇を狙う前回大会覇者ニュージーランドと、2003年オーストラリア大会以来2度目の制覇を目指すイングランドの決勝進出をかけた強豪同士の戦いが、超満員に膨れ上がった横浜国際総合競技場で行われた。
この試合での注目としては、総合力で上回るニュージーランドの今大会唯一の弱点と言えるセットピ-ス(特にラインアウト)での優位性がどの様に試合に影響するか見どころです。
両国国歌の大合唱に続いてニュージーランドの儀式ウォ-クライ「ハカ(カパオ・パンゴ)」が披露されると、イングランドはニュージーランドの陣形を囲むようなVの陣形を敷きVの頂点に立ったキャプテン、オ-ウェン・ファレルの不敵な笑みが何を意味するのか、異様な雰囲気の中、キックオフされた。
試合開始早々1分、イングランドは左サイドのセンタ-ライン付近のラインアウトからFWで前進を試みた後、素早いパスで右サイドへ展開するとFBエリオット・デイリーのラインブレイクからの見事なパスを受けたWingアンソニー・ワトソンが素晴しいランで一気に駆け上がると、今後は左サイドへ展開し敵陣22m内の侵入に成功すると見事な連携からゴールライン手前5mまで一気に駆け上がり最後はCentreマヌー・トゥイランギが中央に飛び込みトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって7-0とイングランドが先制。
持ち味のパワ-と高いスキルでニュージーランドに先制パンチを浴びせる最高のスタ-トだった。
更に畳みかけるイングランドはキックを使って敵陣深く入り込み積極的に前へ出て攻め込むが、ニュージーランドも素晴らしいディフェンスでタ-ンオ-バ-し、得意のカウンタ-から攻撃を仕掛けるものの、イングランドの素早い出足のディフェンスにパスカットされると、イングランドに完全なトライチャンスを与えるが、Flankerスコット・バレットの素晴らしい守備によりギリギリのところで何とか防ぎ失点を免れた。
序盤から一進一退の攻防が続く展開にスタジアムから大歓声が上がった。
猛攻に対して劣勢のニュージーランドだが、規律が守られたディフェンスは素晴しいの一言に尽きた。
16分に初めて敵陣深くでのラインアウトを得るが、スチ-ルされる結果となりチャンスを活かせない。
キックを使って敵陣でのテリトリ-を維持するイングランドは24分、Flankerサム・アンダーヒルがインゴ-ルに飛び込むが、オブストラクションの反則でノ-トライ。
26分、糸口の掴めないニュージーランドもイングランドSOジョ-ジ・フォ-ドの不用意なキックからFlankerスコット・バレットのオフロ-ドパスを受けたSecond Rowブロディ-・リタリックが、ラインブレイクから一気に抜け出し、Centreジャック・グッドヒュ-と繋ぎ敵陣ゴ-ル前まで攻め込むがタッチに押し出される。
得点にこそならなかったもののニュージーランドの攻撃は劣勢の状態からでも素晴しく、イングランドにとって一瞬たりとも油断できない相手です。
その後もイングランドの優位で試合が進む中38分、ラインアウトをスチ-ルしたニュージーランドは素早い攻撃を仕掛けるがイングランドの分厚いディフェンスの前にゲイン出来ず、タ-ンオ-バ-されると横から入りオフサイドの反則を取られ、イングランドのジョ-ジ・フォ-ドにペナルティゴ-ルをしっかり決められて3点を追加される。
ニュージーランドにとっては痛い反則だった。
ニュージーランドを無得点に抑えたイングランドが10-0とリ-ドして前半終了。
試合は大きな波乱含みの展開となった。
前半はこの試合に向けて周到に準備してきたイングランドが、セットピ-スでの優位も含めてゲームプラン通りの展開だった。
後半開始早々、ニュージーランドがパスを繋ぎ展開していくが思うようにゲイン出来ない上、オブストラクションの反則で相手にペナルティを与える。
イングランドFBエリオット・デイリーの54mペナルティゴ-ルは入らなかったが、後半に入ってもイングランドの優勢は変わらず、42分にもハイパントでニュージーランド陣内深くに攻め込むと長く苦しい攻防の果てにペナルティを獲得し有利な状況を作り出すと、ラインアウトからSHベン・ヤングズがパスフェイントからディフェンスの間を割ってインゴ-ルに飛び込んでトライを挙げる。
しかし、モール時のスロ-フォワ-ド(後ろの選手から前の選手にボ-ルが渡る)によりトライは無効となる。
ニュージーランドはまたしてもイングランドのミスに救われた。
更に攻め立てるイングランドは49分、ラインアウトからの展開で一旦ボ-ルを奪われが、若きFlankerトム・カリーの素晴らしいからタ-ンオ-バ-すると、ニュージーランドの反則のアドバンテ-ジを活かしてフェ-ズを重ねるがトライまでは繋がらず。
しかし、先程の反則からSOジョ-ジ・フォ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3点を追加し13-0とリードを広げる。
イングランドは効果的にキックを使いニュージーランド陣内で試合を進める。
54分、久々にイングランド陣内22mに攻め込んだニュージーランドは素晴しいパスワ-クと、Centreソニ-・ビル・ウィリアムズとWingセヴ・リ-スの見事な連係でゴールに迫るが、イングランドディフェンスの見事なタックルでタッチに出された。
直後の56分、ゴ-ルラインまで5mのイングランドボ-ルのラインアウトが、そのままニュージーランドFlankerア-ディ-・サヴェアに渡りインゴ-ルに飛び込んでトライ。
この試合ニュージーランドの初得点となりSOリッチ-・モウンガがコンバ-ジョンキックも決めて13-7と6点差とし反撃開始。
ここまで完璧だったイングランドのラインアウトに、ゴール前での致命的なミスが出てしまった。
これで流れが変わるかと思われたが、油断の全くないイングランドはラインアウトから展開し相手BKの裏に効果的なキックを蹴り込んで大きく敵陣に入り込むと、タ-ンオ-バ-から一気にゴール前に迫り、FWで押し込むがトライまでには至らない。
しかし、ニュージーランドの反則(オフサイド)でアドバンテ-ジを得ていたイングランドは62分、SOジョ-ジ・フォ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3点を追加し16-7と突き放す。
69分にもニュージーランドSecond Rowブロディ-・リタリックのコラプシングの反則から、SOジョ-ジ・フォ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて大きな3点が追加され19-7とする。
規律の高いニュージーランドが反則を重ねる展開が続いた。
その後はイングランドの壁がニュージーランドに立ちはだかり、ニュージーランドも意地の攻めを見せるものの、イングランドの鉄壁の防御の前に成すすべなく、テンポの速い攻撃を展開したイングランドが19-7で王者ニュージーランドを撃破し、2003年オ-ストラリア大会以来16年ぶりの決勝進出を決めた。
イングランドは入念に準備してきた成果を確実に実行できた。
特にセットピ-スとディフェンス、キックの局面でニュージーランドを圧倒した。
決勝も非常に楽しみである。
ニュージーランドはとすべての局面(セットピ-ス、ディフェンス、キック)において劣勢であり、相手の速い出足のディフェンスの前にボールを展開してもゲインすることなくディフェンスラインで押し込まれ、キックでもWingの背後を突かれ後退する場面が目立った。
特筆すべきは規律の高いニュージーランドのペナルティ(反則)が11回もあったことだろう。
最後まで修正できず持ち味を出せなかったニュージーランドに対してイングランドの素晴らしいゲ-ムプランが光った試合だった。
スタッツ
ウェールズ 16 – 19 南アフリカ
会場
横浜国際総合競技場
2019年10月27日(日) 18:00
観客数 67,750人
試合結果
ハンドレ・ポラ-ド
試合内容
準決勝の残り1試合は、北半球のシックスネーションズ王者ウェ-ルズ対南半球のザ・ラグビ-チャンピオンシップ王者南アフリカという、南北半球のチャンピオンによる戦いが昨晩に続いて、今宵も超満員に膨れ上がった横浜国際総合競技場で行われた。
両者は前回大会準々決勝でも対戦しており残り、数分で南アフリカが逆転勝利を収めている。
この試合での注目としては、南アフリカのフィジカルによるパワ-プレ-に加えて展開力と、キッキングに対してここまで鉄壁と言われるディフェンスの輝きが見られないウェ-ルズがフィジカルコンタクトを含め、どの様に対応し、ロースコアに持っていけるかが見どころ。
両チ-ムの熱い国歌斉唱が終わり(両キャプテンの表情は特に印象的だった)、初のW杯決勝進出を目指すウェ-ルズと、3度目の優勝を狙う南アフリカの戦いが、イングランドの待つ決勝戦のもう1つの切符を懸けキックオフされた。
開始早々、強烈なフィジカルコンタクトを見せる南アフリカは、コンテストキックをウェ-ルズFBリ-・ハ-フペニ-にキャッチされるが、体格差を活かしたSecond Rowエベン・エツベスがグランディングさせず反則(モールアンプレイアブル)を誘う。
いきなりフィジカルコンタクトでのタ-ンオ-バ-に成功し、見事な試合の入りとなった。
4分、ウェ-ルズも南アフリカSHフランソワ・デクラ-クのキックで自陣ゴ-ル前まで攻め込まれるが、SHガレス・デーヴィスのキックで陣地回復後、Second Rowアラン ウィン・ジョーンズがジャッカルでやり返しタ-ンオ-バ-に成功する。
序盤から両チ-ムの持ち味が発揮された。
8分、最初のチャンスを掴んだウェ-ルズは、スクラムからショ-トサイドを攻めた後、大外のスペ-スに展開し一気にゲインするがスロ-フォワ-ドでチャンスを活かせなかったが、まずはウェ-ルズがいいい形を作った。
しかし、先制したのは南アフリカだった。
14分、ウェ-ルズ陣内右サイドでのスクラムから展開し、ウェ-ルズの反則からペナルティを得るとSOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3点を先制する。
しかし、ウェ-ルズもすぐに反撃に出る。
16分、敵陣10m付近のラインアウトから左サイドに展開しWingジョージ・ノースが一気に抜け出しパスを送ると、Wingジョシュ・アダムスがゴール前10mに迫り反則(オフサイド)を得る。
SOダン・ビガーが難しい角度のペナルティゴ-ルをしっかり決めて3-3の同点にする。
強固なディフェンスを誇る南アフリカにとっては不用意な反則だった。
直後の19分、キックオフのボ-ルをウェ-ルズがキャッチミスすると、南アフリカはスクラムでプレッシャーをかけ反則を誘うと、SOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3-6と再びリ-ドする。
徐々に自分たちのぺ-スに持ち込んだ南アフリカは、すべての局面で少しづつ勝り始め、見事なパスワ-クと攻撃力を見せ始めた。
34分にもラインアウトからのモ-ルを優勢に進めると、ウェ-ルズの反則(横から入る)によりSOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3-9とリードを6点差に広げる。
ウェ-ルズも39分、コンテストキックの再獲得から敵陣22mに入りラッキ-な反則(普通のタックルに見えたがハイタックルの判定)を得ると、SOダン・ビガーが冷静に決めて6-9と3点差に縮めて戦半終了。
南アフリカが優勢(特にフィジカルにおけるコンタクトとモール)に試合を進めていたが、南アフリカの不用意なミスが多かったこともあり拮抗した点差となった。
全体的にはフィジカルコンタクトでの争いとキック合戦によるテリトリ-の奪い合いの様相を呈しており、トライのないトーナメントによくある硬い試合となった。
ウェ-ルズにとっは予定通りのロースコアの展開ではないだろうか。
後半も前半同様、フィジカルコンタクトとキックの攻めぎ合いからスタ-トする。
後半最初に得点が動いたのは45分、ウェ-ルズの何気ないキックをSHフランソワ・デクラ-クがキャッチミスし、ボールがタッチに出るとラインアウトモ-ル時、南アフリカSecond Rowエベン・エツベスの反則でペナルティを獲得したウェールズは、SOダン・ビガーが冷静に決めて9-9と試合を振り出しに戻す。
その後もキックを主体として一進一退の攻防が繰り広げられるなか、FW前列を入れ替えた南アフリカはスクラムでプレッシャーをかけ、更にCentreダミアン・デアリエンディの見事なグラバ-キックで敵陣22mに入るが、ウェ-ルズの堅守の前に得点を奪えない。
しかし、56分に南アフリカはスクラムプレッシャーからの反則を活かして敵陣深くに入り込むと、マイボ-ルラインアウトから強固なラックで押込み前へ出てフェ-ズを重ねると、SOハンドレ・ポラ-ドのラインブレイクから左サイドに展開し、最後はCentreダミアン・デアリエンディが見事なステップとフィジカルで複数(3人)いたディフェンスをこじ開けて、この試合初の見事なトライを挙げた。
コンバ-ジョンキックも決まって9-16と7点のリ-ドを奪う。
簡単に行かないこの試合は61分、敵陣5mのマイボ-ルラインアウトからFWでの突進を繰り返すウェ-ルズ、押し返す南アフリカ。
21ものフェ-ズを重ねた魂の攻防戦は決着つかず、ペナルティを獲得したウェールズの選択に持ち越された。
導き出された答えはスクラムだった。
スタジアムからは大歓声が沸き起こり、2015年イングランド大会での日本対南アフリカの試合を彷彿させた。
緊張感が高まる中、スクラムでプレッシャーを受けたウェールズは何とかパスを出しSHトモス・ウィリアムズから左サイドのCentreジョナサン・デ-ヴィスと繋いで、最後はWingジョシュ・アダムスがインゴ-ルに飛び込んでトライ。
2015年イングランド大会での日本対南アフリカの試合が蘇ったトライシ-ンだった。
FBリ-・ハ-フペニ-が難しい角度のコンバ-ジョンキックを決めて16-16の振り出しに戻るとスタジアムには大歓声が響き渡り、戦いは全く分からなくなった。
65分の出来事だった。
その後も一進一退の攻防を繰り返す中、ウェールズは敵陣で粘り強くフェ-ズを重ね、72分、一瞬のスキを付いて途中出場のSOリ-ス・パッチェルがドロップゴ-ルを狙うが外れて得点ならず。
直後、南アフリカは強烈なジャッカルでペナルティを獲得し敵陣に入り込みラインアウトモ-ルで仕掛けると、ウェールズがたまらず倒れ込みの反則。
75分、SOハンドレ・ポラ-ドが重要な局面で難しい角度のペナルティゴ-ルを見事に決めて16-19と再び勝ち越しに成功。
最後は南アフリカが強烈なスクラムプレッシャーでペナルティを獲得し、勝利を確信した南アフリカはタッチに蹴り出し試合終了。
結果は16-19で南アフリカが死闘を制し、決勝へのチケットを獲得した。
南アフリカが予想通りフィジカルコンタクトとセットピ-スで上回ったと思う。
決勝に向けてどのような戦術を組み立ててくるのかも非常に楽しみだ。
ウェールズはキッキングで上手く自分たちのリズムを作っていたと思うが、後半にかけてフィジカルコンタクトで劣勢に陥ったと思う。
この試合のような僅差の戦いでは規律の重要性(特にフィジカル、メンタル両方の疲れがピ-クに達する終盤)が非常に大切だと改めて感じた。
ラグビ-好きにはたまらない試合だったのではないだろうか。
スタッツ
3位決定戦
ニュージーランド 40 – 17 ウェールズ
会場
東京スタジアム
2019年11月1日(金) 18:00
観客数 48,842人
試合結果
ブロディー・レタリック
試合内容
長かったラグビーワールドカップ2019日本大会も最終週を迎え、それぞれの思いが交錯するなか、東京スタジアムではニュージーランド対ウェールズの3位決定戦が行われた。
3位決定戦の意義を考えると色々な思いがあるが、両チ-ムが敗戦から気持ちを切り替えてどの様にモチベ-ションを高めてこの試合に臨むのか、戦術面ではプレッシャーの懸からないニュージーランドの多彩な攻撃に対して、ウェールズが今まで通りキックを主体とした戦いをするのか、有能なBK陣を使って攻撃的に戦うのか注目。
大観衆と共に国歌斉唱がスタジアムに響き渡り終えると、ニュージーランドの儀式ウォ-クライ「ハカ(カ・マテ)」が、この試合で代表のユニフォームを脱ぐキャプテンのキアラン・リ-ドの指揮によって披露されると、敬意を払って一直線に整列するウェールズ選手と、静かに見守るスタジアムの観客にラグビ-本来の姿を感じた素晴しい光景だった。
王者の意地と誇りを胸に戦うニュージーランドか、1987年第1回大会以来の3位と66年ぶりの対ニュージーランド戦勝利を目指すウェールズか、共に退任する監督とこの試合を最後に代表のユニフォームを脱ぐ選手に白星を贈りたい一戦の幕が上がった。
開始早々、ウェールズのWingジョシュ・アダムスがラインブレイクから敵陣22mに大きくゲインする攻撃を見せるが、ニュージーランドFlankerサム・ケインのジャッカルの前にチャンスを活かせない。
ニュージーランドも持ち味の華麗な攻撃からペナルティを獲得するが、SOリッチ-・モウンガがポールに当てて得点できない。
アンストラクチャ-の状況を最も得意とするニュージーランドは直後の4分、ウェールズの不用意なキックから見事なパス回しを見せ、ウェールズのディフェンスの隙を突くと、Second Rowブロディ-・リタリックのオフロ-ドパスを受けたPropジョ-・ム-ディ-が約25mを疾走し先制トライを挙げる。
コンバ-ジョンキックも決まって7-0とする。
Second Rowが繋いでPropがトライを挙げるという、まさにニュージーランドらしいトライだ。
ウェールズも速いパス回しからチャンスを作る。
得点には至らないものの、積極的にパスを繋ぐ攻撃姿勢は普段と違うウェールズの姿が見えた。
12分、ニュージーランドはラインアウトから右サイドに展開していくと、SHア-ロン・スミスの見事なバックパスに反応したFBボ-デン・バレットが、ウェールズディフェンスの間を一気に走り抜け中央にトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって14-0とリードを広げる。
ウェールズもニュージーランドの反則から敵陣深く入り込むと19分、ゴール前5mのラインアウトからFWの突進とパスによって14もの、フェ-ズを重ねアドバンテ-ジを貰うと、最後はオ-プンサイドに展開し、FBハラム・エイモスがパスフェイントから抜け出しトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって14-7と点差を縮める。
勢いに乗るウェールズはニュージーランドの切れ味鋭い攻撃を凌ぐと、連続攻撃と相手の反則によりゴ-ルライン5mまで侵入する。
ゴ-ル正面でペナルティを獲得するとSOリ-ス・パッチェルがペナルティゴ-ルをしっかり決めて14-10とする。
その後はセットピ-スでの反則を含め、お互いに一進一退の攻防を繰り返す。
再び試合が動いたのは32分、ニュージーランドは敵陣22m付近でウェールズのボ-ルを奪うと、見事なパス回しからWingベン・スミスが6人もの相手を次々にかわし、インゴ-ルに持ち込み中央にトライ。
素晴らしいスピ-ドとパワ-、ステップで走り抜けた鮮やかなトライだった。
コンバ-ジョンキックも決まって21-10とリードを広げる。
更に攻勢に出るニュージーランドに対して粘り強く対応していたウェールズだったが、前半終了間際の40分、ニュージーランドは敵陣22m付近のラインアウトから素早く展開し、SHア-ロン・スミスの正確なパスを受けたWingベン・スミスが見事なハンドオフから相手を押しのけコーナ-にトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって28-10と大きくリ-ドして前半終了。
3位決定戦らしくリラックスして試合に入った両チ-ムが、多彩な攻撃(ニュージーランド)と本来の持ち味と違うプレ-(ウェールズ)を見せた、非常に面白い前半だった。
後半開始早々41分、ニュージーランドは敵陣深く入り込み、相手のラインアウトをスチ-ルすると、この試合2トライを挙げ調子の上がってきたベテランのWingベン・スミスの突破で相手を引きつけると、素早いパス回しから2人にタックルを受けながら冷静にオフロ-ドパスを出した、Centreソニ- ビル・ウィリアムズにCentreライアン・クロッティが合わせてそのまま走り込んでトライ。
コンバ-ジョンキックも決まって35-10とする。
その後も完全に主導権を掴んだニュージーランドはテンポの速い多彩な攻撃を存分に発揮して、再三ウェールズゴールに迫るが、ウェールズも持ち味の堅守で追加点を許さない。
ディフェンスで耐え、攻撃でも攻め手が無くゲイン出来なかったウェールズは54分、ニュージーランドディフェンスの一瞬の隙を突いて敵陣深く大きくゲインすると58分、敵陣10mゴ-ル正面でのスクラムからFWを中心に20ものフェ-ズを重ね、チ-ム一丸となり、しぶとくインゴ-ルを目指すと最後は、Wingジョシュ・アダムスが鉄壁の守りを見せるニュージーランドを突破して、今大会自身7つ目となるトライを挙げる。
コンバ-ジョンキックも決まって35-17とし意地を見せた。
その後、ウェールズも粘り強く攻撃を繰り返すが、ニュージーランドディフェンスの前に得点できず、総合力で上回るニュージーランドは素晴しいハンドリング技術と戦術で多彩な攻撃を構築すると75分にも、敵陣5mスクラムでプレッシャーをかけ、ショ-トサイドに絶妙なタイミングでパスを送ると、SOリッチ-・モウンガが華麗に飛び込んでダメ押しのトライを挙げ、勝利に花を添えた。
結果は40-17でニュージーランドが勝利。
勝利が喜ばれる一方で、監督の退任や選手の引退が惜しまれる一戦となった。
ボールゲ-ムになった時のニュージーランドの多彩で変幻自在な攻撃は素晴しく、またウェールズもスタッツを見てもわかるようにMetres Madeが418、Offloadsが17とニュージーランドに劣らない数値を出していて、この様なプレ-も出来るのだと改めて感じた。
試合終了後に両チ-ムの選手同士お子さんを抱えて一緒に談笑している姿やメダル授与の時、一緒に壇上に上がり子供の首にメダルをかけるシ-ンは、ラグビ-ならではの素晴らしさを感じる光景だった。
銅メダルを首にかけ笑顔で記念写真を撮っているニュージーランドの姿は、長年トップに君臨する者だからこそできる姿勢なのかなと感じた。
スタッツ
決勝
イングランド 12- 32 南アフリカ
会場
横浜国際総合競技場
2019年11月2日(土) 18:00
観客数 70,103人
試合結果
ドウェイン・フェルミュ-レン
試合内容
夢のような時間は一瞬にして過ぎ去るかのように、全国各地で熱く興奮し感動の渦に包まれたラグビ-ワ-ルドカップ2019日本大会も、横浜国際総合競技場で行われるイングランド(世界ランク1位)対南アフリカ(世界ランク2位)の決勝の舞台を残すのみとなった。
両国が最後にラグビ-ワ-ルドカップで戦ったのは、2007年大会の決勝戦で15-6で南アフリカが勝利している。
この試合での注目としては、両チ-ムの持ち味でもあるフィジカルコンタクトとセットピ-スでの優位性及びお互いに戦術、ゲ-ムプランを分析されたなかで個人がいかに局面を打開できるか、メンタルコントロ-ルがキ-ポイントとなるだろう。
7万を超える大観衆と共に国歌斉唱がスタジアムに響き渡り終えると、運命の一戦の幕が上がる。
最後を飾るに相応しい決勝の舞台が整ったここ横浜国際総合競技場で、ウェブ・エリス・カップを掲げるのは2003年オーストラリア大会以来、2度目の制覇を目指すイングランドか、2007年大会以来3度目の優勝を狙う南アフリカか、キックオフの笛と共にラグビ-ワ-ルドカップ決勝が始まった。
試合開始直後からイングランドサポ-タ-による応援歌(Swing Low,Sweet Chariot)が響き渡るなか、開始1分、南アフリカは敵陣10mライン付近での反則を獲得し最初のチャンスを掴む。
しかし、SOハンドレ・ポラ-ドが狙ったペナルティゴ-ルがポスト右に外れ、先制点とはならない。
風の無い最高のコンディションと、決勝の舞台でのペナルティゴ-ルの重要性を考えると、確実に決めたかったところだろう。
3分、イングランドPropカイル・シンクラーがタックルに行く際、味方(Second Rowマロ・イトジェ)と激しく接触し、脳へのダメ-ジによりピッチを退く。
準々決勝でもトライを挙げるなど、攻守に活躍していただけにイングランドにとっては序盤での痛い選手交代となった。
南アフリカは、直後のスクラムでプレッシャーを与えペナルティを獲得すると、今度はパスを繋ぎながら敵陣深く攻め込むなど優位に試合を進める。
得点が動いたのは9分だった。
南アフリカは敵陣で相手ボ-ルスクラムにプレッシャーをかけ、パスを乱し、ジャッカルでイングランドの反則を誘うと、絶好のポジションからSOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3点を先制する。
その後もセットピ-スで劣勢に立たされるなど、押され気味のイングランドも22分、この試合初めて敵陣22mに入ると連続したゲインラインでの激しい攻防の末、南アフリカの強固なディフェンスは破れなかったものの、南アフリカの反則によりペナルティを獲得すると、Centreオ-ウェン・ファレルがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3-3の同点に追いつく。
南アフリカも26分、キックオフのボ-ルのキャッチミスからのマイボ-ルスクラムで強烈なプレッシャーをかけ、またしてもイングランドの反則を誘うと、SOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて3-6と再びリ-ド。
29分から決勝にふさわしい素晴しい攻防が見られる。
イングランドはFW、BK一体となって波状攻撃を仕掛けゴ-ルライン目前まで迫るが、南アフリカの鉄壁のディフェンスが立ちはだかりトライには繋がらない。
約4分にも及ぶお互いに体力の限界まで出し切った素晴しい必死の攻防戦は決着つかず、最後はCentreオ-ウェン・ファレルがペナルティゴ-ルをしっかり決めて6-6の同点に追いつく。
34分の出来事だった。
結果的にはイングランドの波状攻撃を、ペナルティゴールの3点に抑えた南アフリカの素晴らしいディフェンスが光った。
しかし、南アフリカも38分にNumber Eightドウェイン・フェルミュ-レンが相手に対して覆いかぶさりボ-ルを奪うと、イングランドの反則からSOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて6-9と再びリ-ドすると、40分+2分にもマイボ-ルスクラムからの強烈なプレッシャーで反則を得ると、SOハンドレ・ポラ-ドがペナルティゴ-ルをしっかり決めて6-12とリ-ドを広げて前半終了。
フィジカルを活かしたセットピ-ス(特にスクラム)で完全に圧倒した南アフリカが細かなミスが続いたイングランドに対して点差以上に優勢に試合を進めた前半だった。
イングランドは思うような展開ではなかったが、僅差で後半を迎えられるのは良かったのではないだろうか。
後半の展望は、控えにも強力なFWが揃う南アフリカに対して、徐々に体力の低下が進むイングランドが、セットピ-ス(特にスクラム)でどのような対応を見せるのかが焦点になるだろう。
後半開始から出足の速い南アフリカのディフェンスの前に、ボ-ルを回させられているイングランドは、センタライン付近でのスクラムで、途中交代で入ったFW前列に前半同様、強烈なプレッシャーから反則を受けると45分、SOハンドレ・ポラ-ドが52mの距離のペナルティゴ-ルをしっかり決めて6-15とする。
更にスクラムで圧倒する南アフリカに対して51分、イングランドが意地を見せる。
敵陣10m付近でのスクラムを押し返すと、南アフリカの反則から途中からSOに入ったオ-ウェン・ファレルがペナルティゴ-ルをしっかり決めて9-15と追い上げた。
更に流れの良い中で54分、キックボ-ルのキャッチ後、足を滑らせたSOハンドレ・ポラ-ドに対して、イングランドの21歳の若き才能Flankerトム・カリーのジャッカルによりペナルティを獲得するが、SOオ-ウェン・ファレルが僅かにポール右に外し、連続得点のチャンスを逃す。
すかさず南アフリカが反撃に転じ、精度の高いキックから敵陣深くに攻め込むとラインアウトから一旦パスを回し中央に展開後、FWが再び集まりモ-ルを形成すると、イングランドのコラプシングの反則で獲得したペナルティゴールをSOハンドレ・ポラ-ドがしっかり決めて9-18と再び9点リ-ドに戻す。
イングランドの優勢だった流れを絶つ重要な得点だった。
しかし、直後のキックオフのボ-ルキャッチ後に絡んだイングランドに対して、Hookerマルコム・マ-クスが横から入るオフサイドの反則をすると59分、SOオ-ウェン・ファレルがペナルティゴ-ルをしっかり決めて12-18とする。
南アフリカが引き離しにかかるも、イングランドも食い下がり振り切ることが出来ない。
突き放したい南アフリカはイングランドの不用意な反則(オブストラクション)から、SOハンドレ・ポラ-ドが自陣59mのペナルティゴ-ルを狙うが決まらずリードを広げることが出来ない。
ここまでペナルティキックによる得点だけだったが、ついにトライシ-ンが訪れる。
66分、敵陣10mライン付近でのマイボ-ルスクラムを得た南アフリカは、素早くボールを出すとフェ-ズを重ね敵陣22m付近まで前進すると一旦相手ボ-ルになるが、ボックスキックのキャッチから左のブラインドサイドを突くと、Centreルカニョ・アムからHookerマルコム・マ-クス、Wingマカゾレ・マピンピとタッチライン際でパスを繋ぎ、Wingマカゾレ・マピンピの裏へのキックに反応したCentreルカニョ・アムが素晴しいハンドリングスキルを見せると、最後はパスを受けたWingマカゾレ・マピンピがインゴ-ルまで走り抜き冷静にトライ。(Wingマカゾレ・マピンピはこのトライが自身40本目となる)
南アフリカ史上ラグビ-ワ-ルドカップの決勝での初めてのトライは、素晴らしい連携と個人スキルから生まれた見事なトライでした。
コンバ-ジョンキックも決まって12-25と13点差に広げる。
2トライ2ゴ-ルが必要になったイングランドは積極的に攻撃に転じるが、南アフリカの鉄壁のディフェンスの前にボ-ルを保持しながら後方へ下げられ、前進することが出来ないままフェ-ズだけが、重なる展開から73分、南アフリカは敵陣10m付近での攻防で強烈なタックルによりボ-ルを奪うと、Flankerピ-タ- ステフ・デュトイのパスを受けたWingチェスリン・コルビが、タッチライン沿いを4人のディフェンスを巧みなステップと快足を活かし一気に振り切ると、余裕をもってインゴ-ルに駆け込んで優勝を確実にするトライを決める。
スタジアムは大興奮に包まれた。
コンバ-ジョンキックも決まって12-32とした南アフリカが試合を決定づけた。
更に手を緩めない南アフリカは最後まで敵陣で攻撃し続け、イングランドに全く反撃の機会を与えないまま、80分の鐘の音と共にタッチに蹴り出して試合終了。
パワ-と正確さ、破壊力で圧倒した南アフリカが12-32でイングランドを下しラグビーワールドカップ2019日本大会を制した。
プ-ル戦で敗戦を喫したチ-ムが唯一優勝トロフィーを掲げるという新たな歴史を作る一方、前半リ-ドを許したチ-ムが逆転優勝した例は過去にないという歴史は継続されます。
南アフリカ史上初の黒人キャプテンで、この試合50キャップ目の節目を迎えたシヤ・コリシによってウェブ・エリス・カップが掲げられると、スタジアムから盛大な拍手が送られた。
色々な意味、思いが詰まった素晴しい決勝戦は世界最強のディフェンスを見せた南アフリカが3度目のラグビーワールドカップ優勝を飾った。
アジアで初めて開催されたラグビーワールドカップは大成功のうちに幕を閉じ、4年後の2023年フランス大会に思いをはせることとなった。
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